(雌雄同株):左の写真の垂れ下がっているのが雄花。葯が大きい。上に出ているのが雌花の蕾。右の写真が咲きかけの雌花。赤い花柱が5個ある。(千葉・亀山 07.04.07)

ドクウツギの謎

 野生では見かけることが少なくなったドクウツギ、昨年夏富士山の山麓で偶然見つけた。実は熟して赤から黒紫に変わり始めていた。名前のとおり有数の有毒植物で、赤色の未熟果を誤食しやすく、そのため死亡する子どもが少なくなかったという。「イチロベエゴロシ」という恐ろしい別名もある。ドクウツギ属1属からなり世界に約10種が不連続に点在して分布する。隔離分布の好例としても知られ、植物学者の故前川文夫博士は、これを古赤道に沿った分布であると、仮定し独特の分布論を発表している。

■「古赤道分布説」
前出の植松 黎氏が別の本「毒草の誘惑」で面白い説を述べているので再び引用させてもらう。
◇恐竜絶滅の一因ともいわれる◇ ・・・・・私の脳天に、稲妻が落ちたようなショックを与えたのは、毒のことなどそっちのけに、ドクウツギの分布だけをめぐって100年以上にもわたって議論し、研究し続けている男たちがたくさんいることだった。・・・・普通、同じ属の植物は似たような生活環境に分布している。しかし、ドクウツギ属は熱帯植物ではないにもかかわらず、地中海沿岸地方、ヒマラヤ、東アジア、ニュージーランド、南米と南北半球の熱帯から温帯にかけて、帯状に分布している。まったく植相の違う地域に、なぜとびとびに分布するのか、それがいつ、どのようにはじまったのか、、多くの学者が解明を試みたが、今もって大きな謎なのである。植物学者の故前川文夫博士は、中生代白亜紀の赤道圏に沿っていたのではないかと、「古赤道遺存説」をとなえた。後にその仮説は科学的に否定されたそうだが、一時は大きな興奮をまきおこした。・・・・確実な化石によるドクウツギの歴史は、約3000万年前の漸新世後期までしかさかのぼることができないが、万一、白亜紀の大陸移動前から存在したのであれば、生命史上最大最強の陸上動物である恐竜が滅びた時期とかさなる。同時に被子植物の繁栄が始まった頃でもあり、恐竜の絶滅は、被子植物がまねいたという説もある。・・・・」そして著者は◇恐竜はドクウツギを食べて絶滅?◇と推理を展開させて行くのだが。
熟した「液果」のように見えるが、実は外の黒い皮は花のあと肥大した花びら(花弁)なのだそうだ。中にある「種子」のようなものが本当の果実だという。割って見たら5個ずつ「実」が入っていた。
黒紫色に熟すと食べる動物を見かけたので毒性が弱まるのではないかという記述もあるが、どうだろうか。なかなか試すのは大変だ。種子のような果実は筋がいっぱいある。

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左は千葉・亀山の山の道のガードレール脇に生えていたドクウツギ。(06.03.21)右はドクウツギの葉っぱ。羽状複葉のように見えるが、対生に十数対もの葉が付く。3本の脈が目立つ。
左は都立薬用植物園(03.6.14)右が富士山山麓(10.8.8)にて撮影。赤い未熟果の方が美味しそうだ。
「毒草を食べてみた」(植松 黎)というユニークな本のトップにドクウツギが載っている。著者は茜色の実を噛んでみた。呑み込みはしなかったが、睡眠薬中毒でラリッタような症状が出たと言う。
以下赤い実で果実酒を作り飲んでしまった人の例が載っているので引用させてもらう。「・・・飲んで30分もしないうちにAさんはウオーという叫び声をあげるや、胃の中身をそっくり吐き出してしまった。口や舌がたまらなく痺れ、激しい痛みに腹をかかえて部屋中を転げまわった。近くの診療所にかつぎ込まれた時はすでに顔面蒼白、嘔吐を頻繁にくりかえし、やがて全身をケイレンさせたかと思うと意識を失ってしまった。・・・・・・大学病院に転送され・・・・・集中治療室で治療をうけたものの大量の汗で全身がぐっしょり濡れ、ケイレンと意識不明をくりかえし、発作のたびにのたうちまわるという苦しみが四時間続いたのだった。・・・」主成分のひとつであるコリアミルチンの致死量は体重1kgあたり、たったの0.1mg。

ドクウツギの分布植物の来た道 前川文夫より)