冬に人気のシモバシラ

シモバシラのほぼ全体

上から見たところ

霜柱の拡大部分

霜柱の拡大部分
 冬に人気のシモバシラの霜柱は、どのように形成され、いつ頃霜柱が見られなくなるのかについては知りたいところですが、まだ不明な点が多いようです。そこで、実験で得られた内容があるか、調べてみました。

シモバシラ(シソ科シモバシラ属)の学名: 
Keiskea japonica で、 「属名のケイスケアは、幕末から明治にかけて活躍し、リンネ学説を紹介した植物学者の伊藤圭介にちなんでつけられた。」             (黒崎史平『植物の世界20』1994、朝日新聞社)

木村和義・田中丸重美「シモバシラ(シソ科植物)の着氷観察」: 『農業気象44』1988 

 「地温が比較的高いため、夜間でも根での吸水が行われ、水は導管を通して地上部へ送られる。しかし、水が地上部に達すると外気温が氷点下のため、茎部の表面に氷結が起こり、次々と茎部から外側へ氷りを押し出して厚い氷の層を作ると考えられる」とし、実験をしたところ、

 「12月初旬に最低気温が氷点下になってもすぐには着氷現象は見られない。この時期の茎は茎皮で被われている。数回の氷結で、茎皮が破れてきて、内部の木質部が現れてくると、着氷しやすくなるようである」.。着氷現象は他のシソ科やシソ科以外の植物でも発生しますが、シモバシラのような特異現象を起こすのは、「1) 維管束の外部への開口部が大きいか、または多数存在する、2) 茎の組織の木化が著しく耐寒性が強く枯れにくい、3) 茎の熱容量が大きく茎内での凍結が起こりにくい、ことなどが考えられるが、詳細は今後の検討が必要である。」としています。
  また、実験の結果、「(着氷は)1月中旬以降はほとんど発生しなくなった。この着氷の急激な減少時期は、地上10cmの最低気温がその冬初めて約-6℃以下になった日と一致していた。その日の後の茎の状態をしらべてみると、地表面から2〜3cmを残して枯死しており、-6℃がほぼ茎の凍死点であろうと考えられた」。

犀川正稔「シモバシラによる霜柱形成と木部にできる二次的な水の通路」『東京学芸大学紀要自然科学系』57(2007):切り花着色剤「ファンタジー」を用いた実験

 「霜柱形成のための水は凍る直前に放射方向(地面と平行)に移動するのではなく、木部の中にできた水の通路が木部の表面近くを通ったときに、その部分から外部に滲み出て凍るものと思われる」。つまり、「水は冬季木部に二次的にできた、上方にのびる水の通路にのみ運ばれる。」という結論が導かれています。また、「皮層を失った後でも夜間気温が氷点下になれば霜柱は木部の表面に1ヶ月以上、何度も発生する。」とあります。上論文と合わせて考えると、木部がある程度の高さ枯死せずに地上に残っていれば、夜間気温が氷点下になれば、霜柱が見られるということでしょうか。
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下写真は2010/01/14、池も凍るほど冷え込んだ午前中、板橋区赤塚植物園で撮影しました。去年、小仏城山で観察した同種との違いは、植物の地上茎(果実を含)のほぼ全体が残っていることで、そのためか、縦に長い霜柱でした。残っている理由は、板橋区が小仏城山より気温が暖かいからではないかと、上掲載文から推測しました。同植物園では、三ヶ所シモバシラが観察できます