高尾山国有林巡視日誌(32)
 林野庁・東京神奈川森林管理署の森林保護員として、高尾山国有林とその周辺の森林パトロールを行っている宮入さんの巡視日誌「その32」です。

●平成21519日(火) 天気:曇

 北高尾山中で加藤さんが不思議なアジサイを見つけた。葉はヤマアジサイのようなのに花に装飾花が無い。加藤さんは「新種発見だ!」と、興奮気味だった。

※この後が大変だった。図鑑で検索しても分からない。そこで、分類に詳しい人達に写真を送ったら、早速ボタニカルアーティストの内城葉子さん(日本より本場イギリスで評価されている)から電話があり、実物を見たいから連れていけ、という。雨の中、現場に行き、一枝を標本用に採取した。その標本を見た畔上能力氏が、林業試験場の林弥栄氏の論文で過去に報告例がある、ということで、内城さん達が論文を調べまくった結果、ガクウツギとコアジサイの雑種「オクタマコアジサイ」であることが分かった。ただ、自然交配の物が高尾山域で発見されたのは初めてで、畔上氏は公の場で発表する、との事だ。

平成21526日(火)  天気:

 滝ノ沢林道の終点で、見慣れないアゲハチョウを見かけた。図鑑を見ても載っていない。チョウのことならFITの梅田さん。早速聞いてみたら「これはチョウではなく、アゲハモドキというガです。ジャコウアゲハという、体内に毒(ウマノスズクサが食草)をもっていて鳥が一度口にするとあわてて吐き出し、二度とおなじような色彩と模様のチョウを食べないという習性に目をつけて、ジャコウアゲハに擬態した蛾なのです。」という返事をいただいた。蛾の図鑑を開くと確かに載っていた。そして写真をアップすると触角がガの特徴である櫛形だった。常套句で申し訳ないが、自然界は本当に不思議に満ちている。

●平成21530日(土) 天気:雨のち曇

 アジサイの根元に豆粒の様なものが点在していた。アジサイの根元、といえば「キヨスミウツボ」。これは、その蕾と思われる。開花は6月末という意識があるので、時期的に例年より早いような気もするが、温暖化の影響か最近の高尾の花は咲き急ぐ。まぁ、仕方ないか。

●平成2167日(日) 天気:晴

 オトシブミの仲間は種類が多く、また卵を産みつける「揺らん」も、葉からぶら下がるタイプ、葉から切り落とすタイプなど様々だ。この日、滝ノ沢林道で出会ったのはヒゲナガオトシブミ。この仲間の中では頭部が長く、独特な姿をしているのですぐ分かる。

平成21613日(土) 天気:晴

 「パウロの森」の中をコクワガタのオスがゆっくり歩いていた。八王子市下恩方にある聖パウロ学園は東京ドーム6個分の敷地があり、そのほとんどは森だ。FITは5年前からこの森で生徒たちに森林体験や整備の授業を行っている。(「パウロ・ネイチャー・プログラム」と名づけられ、必修課目なのが面白い。)最近では、父母も参加してのモデル学校林整備も行なわれ、植生も豊かで多くの昆虫も集まる素敵な森になってきた。

●平成21617日(水) 天気:晴時々曇

 加藤さんの「高尾山情報」によると、「クモキリソウ」が咲きだしたという。この植物には3年前から出会っているのだが、何故か毎年花の時期を逃してしまう。今年は一週間後を予定していたのだが、待ちきれず現場に行った。花には初めてのご対面。ただ、花の数が少ない。やはり、もう一週間我慢した方が良かったか・・・ 

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