高尾山国有林巡視日誌(29)
 林野庁・東京神奈川森林管理署の森林保護員として、高尾山国有林とその周辺の森林パトロールを行っている宮入さんの巡視日誌「その29」です。

●平成21312日(木) 天気:快晴

ついにシカの糞を見つけてしまった。俵状の糞。場所は北高尾山稜の山の中。消えかけた巡視路を開通させていた時だった。周囲の木に被害は見られなかったので、奥多摩のシカが単独でやって来たものと思われる。出来ることなら高尾山に魅力を感じず、速やかに帰ってもらいたいものだ。

●平成21320日(金・祝日) 天気:雨のち曇時々晴

この時期、湿った岩の中からくぐもった声や甲高い声が聞こえる。タゴガエルの鳴き声だ。伏流水が流れる岩の隙間や穴の中で産卵する。声はするが穴の中にいるため姿は見えない。

ところがこの日、穴の前に4p程の2匹のカエルがいた。オスの声に誘われてやって来たメスのタゴガエル。どこの穴に入ろうか、思案中のようだ。声だけで判断しなくてはならない。低音か高音、どちらがもてるのだろうか。

●平成21323日(月) 天気:晴のち曇

堂所山の山頂下で、ナスのような蕾が垂れ下がっていた。最初、良く分からなかったが、花が近くに一輪咲いていた。チョウジザクラ。萼筒が長太くて短毛があるのが特徴だ。本州の山地に分布する、とのことだが、登山道の脇に3本並んでいた。植栽されたものかも知れない。

●平成21326日(木) 天気:晴のち曇

巡視路を歩いていたら、ある沢に出た。そこにはハナネコノメ、ハシリドコロの群落。そしてエンレイソウの群落があった。今まで高尾山域でこれほど多数のエンレイソウが咲いている場所を見たことがない。もっとも、昔はこんな光景はどこの場所でも見られたのだろうが・・・

●平成21326日(木) 天気:晴のち曇

高尾山域には約20種類のスミレがあるといわれているが、一般的に見られるのは15種類ほどだ。その中で、一番清楚で美しいのがヒナスミレ。花びらのピンクのグラデーションが、頬を染めた乙女のようで、かわいい。(古くさいオヤジ的表現ではあるが)

この日、林道を歩いていたらヒナスミレがまとまって咲いていた。遠くからもその色が分かるほど。山の中で若い乙女の集団に出会ったような感じで、オジサンとしてはとても嬉しかった。

●平成21331日(火) 天気:曇時々晴

高尾山のブナは有名だが、皆高木なので実際に目の前で花を見ることは、なかなか出来ない。見られる場所は一箇所。ケーブル「高尾山駅」前の広場では見ることが出来る。その場所で、花が咲きだした。垂れ下がっているのは雄花。雌花は見つからなかった。

温暖化の影響もあるのだろうか。現在の高尾山はブナが育つ環境ではなく、実を付けても中身が無く次世代が育たない。それも高尾山の現実として認識しなくてはならない。


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