高尾山から考える、日本列島の成り立ち
〜高尾山・関東平野の生い立ちと、川が作った地形〜

2016年11月2日(水) 林友ビル6階 会議室

 杉内先生の長年にわたる地形・地質の調査研究の成果を基に、日本列島の形成から地域の自然災害の防災・減災活動に至るまで幅広いお話をして頂いた。

概要:
 地球はその誕生以来、自らの内部エネルギーによって生命体のように今も盛んに活動を続けている。日本列島の成り立ちは3億年以上前の歴史まで遡る。高尾山を含む関東山地、武蔵野台地、関東平野などの生い立ちも、日本列島の成り立ちとその後の地殻変動や気候変動による海水面の変化によって説明される。
 人類の歴史に比べて3億年という壮大な時間経過は想像しがたいため、年を円に置き換えてみれば実感が湧くのではないかとの提案が杉内先生からなされた。
キーワード:付加体、四万十帯、海洋・大陸プレート、海進・海退

1. 日本列島の成り立ち
 海領で生まれた海洋プレートは、西進し海溝に沈み込むとき堆積物やプレート表層部(玄武岩)が大陸プレート側で剥ぎ取られ、次々と新しい付加体を成長させる。堆積地層の最上部は砂岩・泥岩(陸地からもたらされた砂、泥、火山灰)、その下部にチャート(放散虫・プランクトンの殻)、最下部に石灰岩(プランクトンの死骸、サンゴ礁)等で構成される。
 約2000万年〜1500万年前にマグマの活動により、大陸東縁部で地殻に割れ目が生じて大陸から移動を始めて日本海と日本列島を形成した。

2. 高尾山を含む関東地方の地層
 地質的にみると、主に年代の異なる3つの付加体(又は変成帯)に分類できる。
@ 四万十帯:白亜紀(約1億年前)〜古第三紀(約3000万年前)に古アジア大陸東縁にあった海溝付近に積もった堆積物から成る付加体。中央構造線の南側で関東から四国、九州に至る太平洋側に分布。最も新しい地層。高尾山はこれに属し、白亜紀(約1億年前〜6500万年前)のもの。
A 秩父帯:石炭紀(約3億年前)〜ジュラ紀(約1億4500万面前)に古アジア大陸東縁の海溝付近にたまった堆積物の付加体。チャート化石も発見されている。独特の山容をした両神山(日本百名山の一つ)はチャートで構成。
B 三波川変成帯:白亜紀(約1億4000万年前)に古アジア大陸東縁の海溝付近にたまった堆積物や火成岩がプレートの沈み込みにより地下約30qの深部に潜り込み、約1億1000年前までに高圧力を受けてできた変成岩。約8000〜7000万年前に地下から上昇して陸化。三波川(藤岡市)や長瀞・岩畳の結晶片岩が有名。
 当日は5種類の堆積岩・変成岩のサンプルが準備:@砂岩(砂等の堆積物)、A凝灰岩(火山灰が起源)、B石灰岩(珊瑚等が起源、秩父系)、Cチャート(放散虫等の殻、秩父系)、D結晶片岩(変成岩の一種、三波川系)。実際、手に取ってみるとそれぞれの特徴、違いがよく分かる。

3. 関東平野・武蔵野台地の生い立ち、川や海で形成された地形
 地形が形成されるときに働く力:@地殻変動(隆起、沈降)、A気候変動による海水面変動(海進、海退)、B水の力(浸食、運搬、堆積)等。
@ 関東平野:低地、台地、その周辺に丘陵地や山地で構成。地形的には低地が最も新しく、台地、丘陵、山地と古くなるが、その区別は慣用的で明確な基準はないとのこと。
関東平野は相対的に周辺が隆起して高くなり、中央部が沈降して低くなるような地殻変動によって、盆地状の地形をなす。
A 武蔵野台地:その範囲は、北は荒川・入間川、南は多摩川、西は関東山地、東は山の手台地まで。青梅を扇頂とし旧多摩川が作る扇状地に起源をもち、かつて川であった場所が流路を変えながら陸化してできた台地。地形・地質は古い地層である上総層群の上に、幾つかの段丘面に分かれる。立川面、武蔵野面、下末吉面と古くなるほど厚いローム層に覆われている。扇端から先の低地(三角州)は緩い川の流れで堆積して作られた自然堤防、後背低湿地等からなる。
 台地の歴史は、最もよく分かった時代の最終間氷期(約12万5000年:温暖化、古東京湾、下末吉海進)頃から始まり、最終氷期(約2万年前:寒冷化、海面高度は現在より100m以上低下、東京湾は陸地化し古東京川)を経て後氷期(約7000年前:温暖化、縄文海進ピーク時に陸地まで進入)等の気候変動の影響を受けながら形成された。
 一方、江戸時代以降は人為的な改修・付け替え(流路の変更)によりかつての利根川・荒川(古利根川・古荒川は共に東京湾に注ぐ)の流れは変わり、地域限定とはいえ短期間に地形を変化させた。利根川は東遷し、荒川は西遷して現在の河川流域となる。更に最近の都市化や温暖化により、 自然災害のリスクは増大しているとの指摘があった。
 今ある地形は過去の自然環境の変化の積み重ねで出来ており、自然災害とも大きく関わる。東京近辺の低地をみても、昔の川の流れに沿って水害が起こっている(1947/9/8/カスリン台風:利根川・荒川の堤防決壊)。身近な地形を知ることは防災・減災に繋がるとの考えで、「荒川流域の高低差まるわかりMAP」作りにも尽力されている。大変地道な仕事であるが、人の命を守り安心・安全な街づくりに役立っている。

感想:
 数億年以上の時間を経て形成された日本列島は4つのプレート上にあり、モザイク状地形・地層は自然災害と同時に多様性を生み出し、その地形・地質の上に多様な生態系が作られているのだと気付かされる。
 草木等の観察も、それらを育んでいる土壌・地形等に意識を向ければ、植生との関係性にも関心が向う。大変内容豊富な話であり、理解できないことが多く様々な角度から学び直しをする必要性を感じた。
 杉内先生には、今後の活動に役立つ有意義なお話と色々な質問にも懇切丁寧に説明して頂きました。
参加者:38名

講師:杉内 由佳 先生(立正大学・地球環境科学部外部研究員、千葉科学大学非常勤講師)

 (報告:石田 祐三)



岩石のサンプル
(左上:結晶片岩、右上:砂岩、
中央:凝灰岩、
左下:石灰岩、 右下:チャート)


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