大自然塾・鳩ノ巣の山

  
「多摩の森・大自然塾」 東京の森林の新しい試み
東京・松井一郎(9-0567)


 東京というと大都会で、森林などないと思っている人が多いのではありませんか? 実際には53,090ha(島嶼を省く)の森林があり、そのうち人工林が31,850ha(約60%)あります。問題はその人工林で、現在かなりの面積が手入れもされず、荒廃した状態です。昭和30〜40年代、薪炭林だったところにスギ、ヒノキが大量に植え替えられました。しかし、木材の輸入の自由化、それに伴う木材の価格の低迷、農山村の過疎化、林業従事者の高齢化、後継者不足など、せっかく植林したスギ、ヒノキが手入れもされなく放置されているのが現状です。

 このように荒廃し、放置された森林は、環境にもよくありません。林床も植生がないので、土砂の流出も著しく、山地の崩壊も起こっています。 そのような東京の、特に奥多摩の人工林を市民ボランティアと一緒にスギ・ヒノキの人工林に再生しようというのが、東京都が行っている「多摩の森・大自然塾」です。

 「大自然塾」という名称では、産業労働局、水道局、建設局、環境局、教育庁の5つのセクションがそれぞれ推進しています。 そのなかで、我々森林インストラクター東京会が係わっているのが青梅線「鳩ノ巣駅」付近の約10haの民有林地。地主さんは材木や木材の価格の低迷から、新たに木を植えるつもりはなく、東京都の森林再生事業に快く山林地を提供しています。要望は、自由に使って「いいヤマ」にして欲しいというだけです。この山林地を、東京会が将来を見据えて豊かな森林にしようとヤマ作りが始まったのは平成14年10月。

 まず道づくり、皆伐地の地拵え、手の入っていない人工林の枝打ちや間伐などを行い、今年の3月29日に多様性のある森づくりを目指し、スギの皆伐地に広葉樹を植えました。 定例の活動日には一般市民のボランティアの方々も参加します。特に親子連れや若い人の参加も呼びかけたのは、次世代に森林を受け継いでいくために、世代を超えた交流も必要と考えたからです。また、地元の方々の参加や交流もあります。森林は5年や10年でできるものではなく、50年100年と長い期間、人の手を入れてはじめて多様性のある、豊かな森林になります。そのためには地域の人や若い人たちに受け継いでほしいからです。

 このように行政の施策、市民の協力、地主の理解、地域との交流がこれからの森作りには欠かせない協働作業。これを横軸に、そして異年齢による世代間の交流と参加を縦軸に。これがうまく組み合ってこそ、将来にわたって続けられる市民参加の森林ボランティアとして、価値 のある森づくりと我々は考えています。そして多くのボランティアと一緒に、鳩ノ巣山林地の森林計画づくり、植生などの資源調査、施業方法など将来の森林を考えながら、話し合い、企画立案を行っています。 森づくりのなかから、自然と環境を学ぶ場づくりが、われわれ東京会の目指す森林ボランティア活動です。

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